2017年2月14日

Liege


それはとてつもなく古い古本屋だった。置いてある本に負けないくらい、本屋自体が古いのだ。

なぜ古本屋というものは、それ自体古いのであろうか。

ところでヨーロッパ人の趣味に「古い手紙の蒐集」というものがある。歴史上の誰誰が誰誰に書いた手紙とかを集めるのである。

きわめて貴重なものでいえば、たとえばゴッホが弟に宛てた手紙とか、モーツァルトが父親に宛てた手紙とかがある。

驚くべきことに、これほど歴史的なものでなくても、ドイツの蚤の市(グロース・マルクト)などにいくと、「古手紙」が売られているらしい。

らしい、というのは妻から聞いた話なのだが、妻はこのグロース・マルクトが大好きで、よく行く。そしてときどき、アンティーク調の裁縫セットだとか、どこかのイギリス人の描いた水彩画だとか、ラミーのペン5本セット(しかも新品)だとかを掘り出して、値切って買ってきて、満足している。

そしてある日妻は、「古手紙」を買ったと思わしきおばあちゃんをバスの中で発見した。おばあちゃんはいそいそと手紙を取り出しては(きっと家まで待ちきれなかったのだろう)、おもむろに読みはじめた。

いったい古手紙を読んでどうするのだろう、と思うのだが、きっと、味わうのだろう。

ヨーロッパは、とてつもなく奥が深い。